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6月25日開催の「第51回総会記念講演(定例会)」報告を掲載しました。

第51回総会記念講演(定例会)報告

2022年6月25日

ドリアン助川氏 講演要旨
演題「生きることのもう一つの意味」

 作家であるドリアン助川氏による貴重な講演を拝聴できたので、その様子をお伝えしたい。
 氏が執筆されたハンセン病に関する小説「あん」は映画化もされ、カンヌ映画祭での受賞、世界21言語にも翻訳された世界的なベストセラーでもある。
 この作品が描かれるまでの氏が経験されたことを通し、「生きることの意味」を私たち一人一人に問いかけていただいた。
 小説のテーマとなった、ハンセン病自体には罪はなく、ましてや罹患された方には中途半端な医療科学技術の発達により、悪法が何十年にもまかり通り、人生を翻弄され、いわれなき差別を受けてきた多くの人がいるなかで、「社会に役立たなければ生きる意味がない」といううすら寒い世の中の風潮が生まれたことに対し、巨大な一石を投じている。
 氏がハンセン病をテーマとする小説に取り組むにあたり、氏自身が色弱であったこと、カンボジアでの難民取材、ラジオパーソナリティーでの若者からの受けた人生に対する深刻な相談、一方では出版にあたり、出版社の心あるごく一部のひとの支援、映画化にあたってのタブーとされていたハンセン病をテーマにすることに対する製作費への受けた支援などが、氏がこれまでに関係した多くの人々とのつながりが有機的に関連しており、凝縮されたたこと。これが「生きること」への問いかけに昇華した珠玉の作品となった。
 氏がいきついた一つの結論が「積極的感受」である。世界は初めから与えられており、すべての存在のために「感受」(受け入れるということ)することにある。
 現在のコロナ渦。今までの価値観が大きく変化する中で「生きることの意味」を問いかけていただき、自分の人生を改めて見つめ直すいい機会となった。(文責:荒武愼一)

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