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独立スタート3年が勝負?

  • 2021.3.15

独立スタート3年が勝負?(前編)

茗谷倶楽部副会長
荒武愼一

 中小企業診断士資格を取得して、ちょうど10年になり念願の独立も果たしたが、「毎日が勝負」と自営業者らしい毎日が続いている。

 サラリーマンの恵まれた環境を捨てあえて荒波に漕ぎ出したものの、独立を継続できず、サラリーマンに逆戻りの事例も多々みてきた。「3年間必死になってやればなんとかなる」とは本音ベースでのお付き合いのあるいろいろな士族の方との会話でよく出る話である。逆に3年もてば次の展望が見えてくるともいえる。それまで、気力、体力、財力が持たず、あえなく断念することもあり得る。

 独立の秘訣教えますとか「開業セミナー」などという独立に夢をもった人を対象とした講座があるが、肝心のことは話をしないし、本音の部分は聞けないことが多い。それで数十万円というあくどい商売も存在している。

 研究会などというものに入って、情報を聞き出そうとしても、士族は「武士は食わねど高楊枝」のひとなので、本音が聞けない。ましてや仕事の紹介などは期待しないほうが良い。

それでは、なにが独立の要素なのだろうか?

 以下は、10年のなかで、いろいろ見聞きした内容である。
 最終目標を、コンサルティングファームを経営し業界での地位を獲得としよう。その前段階ではマスコミでの露出、執筆、SNS・YouTube発信などが考えられる、ではその前段階はセミナー登壇で名前を売ることが考えられる。その前にコンサルティングファームのサラリーマンではない専属コンサルなどもあるだろう。別のパターンとして、顧問契約を数多く取り、従業員を何人も抱えて事業家として仕事をするのもある。

 そんなことをしなくても、細々と収入があり、今まで得た知識で毎日楽しく過ごすこともありだ。資格学校の講師、受験添削指導、専門家派遣でのワンタイムで食いつなぐなど、とても一家を支える金額にはならないがそこそこ忙しい。

どんな姿を想定して独立したか?

 「資格さえあればなんとかなる」とは多くの人が考える。ところが現実は「なんともならない」のである。なぜか?基礎的な条件を無視して独立を強行すると厳しい現実が牙をむいていることが理解できてなくて、資格学校などが喧伝する夢物語、スタープレイヤーの話に踊った結果だろう。プロ野球でも、よくTVで「ドラフト1位の〇〇さんは今?」などの番組を見るが、まさに当業界でも全く同じと考えてよい。

 基礎的な条件とはなんだろう。いろいろな意見があるが、次回詳しくご紹介しよう。


独立スタート3年が勝負?(後編)

茗谷倶楽部副会長
荒武愼一

独立するための基礎的な条件とはなんだろうか

 私なりに整理すると以下のようになる。

<仕事上の基礎的な条件>

  1. コネがある。友人、先輩、地元、議員など。また前職の人脈がある、これは1~2年は顧客のつながりはあるが、相手が社長以外だと消えてなくなる。
  2. 資格は中小企業診断士ひとつあれば十分だ。もともとコンサルタントには資格制度がない。法的に必要なことをやろうとすると、資格が必要になることがあるが、いまさら資格コレクターになり、名刺に刷り込んでもあまり評価されないであろう。
  3. 前職での経験の強みがある。IT、販促、経理、生産管理、物流、人事など専門分野での経験であるが、これからの顧客にドンピシャ当てはまることは皆無だろう。ましてや「上場企業の部長やってました」は嘲笑の対象。
  4. 社内の一般的ルールを知っている。ただし、稟議、根回し、業界の常識など。普遍的なものはなく、単に知識に過ぎない。
  5. 営業センス。これが一番役に立つかもしれない。新規顧客開拓術、顧客満足度上げる。そこまでやるかという粘り、あきらめない、約束を守るといった、基本的なことだ。

 このあたりまでは「開業セミナー」でもよく言われていることだ。

 ところが、本音ベースではもっと重要な条件がある。それは、「3年間喰っていく基礎的条件」である。

 前述したように、3年間で何とかするためにはその3年間の、財力の裏付けが必ず必要だ。仕事上の基礎的な条件があっても、資金が続かなければ全く意味をなさなくなる。

 その条件とは、

  1. 配偶者が働いている。特に正社員、公務員であるとさらに良し。健康保険・年金も扶養に入れる。
  2. 家のローンがない。つまり借金がないということ。
  3. 親からの遺産がある。現金での遺産があること、原野を持っていても仕方がない。
  4. 副業がある。例えばマンション、アパートを貸しており、現金が毎月入ってくる。
  5. 年金収入がある。前職の企業年金、65歳以上であれば厚生年金が2カ月ごとに入ってくる。
  6. 子供がいない、独立している。扶養する必要がないので責任が軽くなる。
  7. 現金預金が3年分の生活費はある。贅沢をしなければ1000万円くらいか。
  8. 健康。自分と家族がどのような状態か。内科・外科・歯科の状況もある。

 といったところか。

 どれかあてはまるといいのだが、どれも当てはまらないと、かなり厳しい状況も知れない。サラリーマン生活では見えない世界が自営業にはある。それを見なくても人生は送れるが、せっかく取得した資格で人生を豊かにできる可能性はある。夢を見つつ、一方では冷静に人生を考えてみる。

 茗谷倶楽部で本音の話をしてみるのもいいかもね。

以上

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