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交遊録

  • 2021.2.1

交遊録(前編)

茗谷倶楽部会長
渡辺真一郎

 昨年の役員会にてHP活性化の一貫として、「交遊録」のご提案がありました。
 率先垂範ということで、私が最初の投稿させていただきます。
 まさしく「交わって遊んだ」記憶に残る人との思い出話です。
 最後までお付き合いいただくとともに、次の方にバトンリレーができれば幸いです。
 よろしくお願いいたします。

 私、前職にて証券会社に30年ほど在籍、支店での営業業務が長かったため、上場・未上場企業の経営者の方々等と様々なご縁をいただきました。
 その中で、最も敬愛する経営者のお一人が、八王子に本社のある「株式会社うかい」の、創業者、故鵜飼社長です。
 「うかい」といえぱ、ご存じ「銀座うかい亭」にて数年前、安倍元総理がトランプ大統領を接待したことで更に知名度を上げました。
 相当敷居が高そうですが、八王子高尾の本店までお越しいただけると、比較的リーズナブルにご利用いただけます。要するに都内はショバ代が高い!!!
 当時のエピソード・内緒話を交え、交遊をご紹介したいと思います。ホントに内緒ですよ、、、

 1995年、私が八王子支店長を拝命してからお付き合いが始まりました。
 当時、上場を数年後に控えた状況であり、主幹事証券の担当部店として様々お手伝いをさせていただくとともに、個人的にも極めて濃く、深く、密なお付き合いをさせていただきました。特に、夜の倶楽部活動のお付き合いは凄まじかったです(笑)
 創業は高尾山のふもとでの「うかい鳥山」という焼き鳥屋さんです。続いて、「八王子うかい亭」という鉄板焼、和食の「竹亭(ちくてい)うかい」、「とうふ屋うかい」と展開していきます。
 ここだけの話ですが、「とうふ屋」が原価安く一番儲かるとのことでした。
 八王子本店はわざわざ飛騨から古民家を移設したもので、高尾の山奥の不便な場所ですが大変「趣」があり、「うかい」の原点です。6、7月には近くを流れる川にホタルも放流されます。
 料理はもとよりハード面、接遇等のソフト面双方にもトコトンこだわっていました。
 社内旅行にもご一緒させていただきました。当時の社内旅行は会社が相当な費用負担し、全国の超一流旅館・ホテル等にて、最高レベルの料理・サービスを社員に体験していただくという研修の一貫であり、また、慰労を込めて社員を接待するというものでした。
 ご一緒させていただいたある年は、宴会場での夜の会食終了後、モノマネの松井直〇さんがサプライズで登場し、大うけしてました。モノマネ番組全盛の時代でしたので。
 もっとも、上場後は過度な会社負担での社内旅行はご法度ということで、良き伝統行事がなくなったことは残念です。上場も良し悪しですね。
 業績好調で、スムーズに上場到達と思われましたが、ある時、鵜飼社長が温めてられていた構想で、「美術館をやりたい、それもベネチアングラスの美術館を」ということになり、本社の上場担当部署は大慌てでした。
 当時、全国津々浦々、美術館は多々ありましたが、調べてみると、民間経営の主な美術館で黒字経営ははわずか数館のみとのことで、それ以外はスポンサーが社会貢献や趣味で経営しており、全て赤字経営とのことでした。
 そのような状況の中、本社の判断として、収益ビジネスとしては無理がありオープン後の状況を確認しなければ投資家に責任を持てない、ということになり上場が延期となりました。
 当時、上場延期は由々しき事態でした。
 美術館建設自体は順調に運び、いよいよオープン。縁起を担いでか、オープン日は平成8年8月8日(1996年)となりました。
 前日夕刻、関係者にてオープングセレモニーが開催されました。ところが、東名高速道路が大事故で大渋滞。車・会社手配のバスで移動の来賓がほとんどでしたので、開始時間が相当遅れ、縁起が良いどころか、暗雲立ち込めるスタートとなったことが大きな記憶として残っています。
 ご存じかもしれませんが、現在の「箱根ガラスの森美術館」です。
 さて、無事、上場に至るのでしょうか、、、

 後編に続きます。


交遊録(後編)

茗谷倶楽部会長
渡辺真一郎

 「ガラスの森美術館」は予想を覆し、当初から想定以上の人気スポットとなり、入場者・売上とも順調ということで、速やかに上場準備再開し、無事、99年上場に至ったということです。98年に異動になった私は、上場延期により、残念ながらその場に立ち会えませんでしたが、最高の思い出の一つとなりました。

 調達した資金で、「表参道うかい亭」、「芝とうふ屋うかい」、「銀座うかい亭」、その他業態に展開し、現在に至ったということです。

 鵜飼社長との会話の中での思い出の一つは、トイレへのこだわりでした。
 「社長、私が訪問した店舗では、全てトイレがいつもきれいですね」と何気なく伺ったところ、鵜飼社長が嬉しそうに、「へっへっー。良いところに気が付いたね。料理が美味しいのは当然、お客様が接する部分を完璧に綺麗にするのも当然、また、きちんとした接遇も当然。

 おろそかにしがちなトイレこそこだわっているんだ。一点のスキもつくってはいけない、それが最高のおもてなしというものだ」とおっしゃっていたことが極めて強く印象深く残っています。

 以来、飲食業に関わらせていただく時もそうですが、その他の業態についても、トイレ的角度から評価する重要性を感じています。

 東京タワーの真下にある、「芝とうふ屋うかい」もエピソードがあります。
 当時は、4階建て程度の低層ビルでボーリング場などが入ったビルだったそうです。何らかの理由で、オーナーが売却意向表明し、コンペになり、数社が参加したそうです。
 他社はビル建替、有力テナント誘導等の企画だったそうです。

 「うかい」は平屋建て、和風庭園のとうふ屋店舗を提案。絶対コンペに勝てないし、ましてや採算も合うはずない、といわれながら、「うかい」が落札しました。実はビルのオーナーが「うかい」のファンだったそうです。採算合わないという前評判もこれまた覆し、和庭園の雰囲気、東京タワーの真下という景観含め、当初から大人気で、外国人にも極めて評判高く、今ではちょっとした名所になっていますし、高収益店となっているようです。何度も言いますが、とうふ屋は儲かるんです。

 加えて、内緒ですが、実は裏口に車から直接出入りできる隠れ出入口があり、芸能人や政治家の方々はそこから出入りしているようです。ドライバーの方の待機部屋も用意されているようです。

 これらの事例から学んだことは、オーナーの事業に対する発想・夢、執念はすごいということです。

 常識や過去の成功体験で考える利害関係者から、「無理だ」、「反対だ」と言われながら、オーナーとそれを信じる支援者・部下はチャレンジするのです。
 ちなみに当時、うかいの全社員が鵜飼社長のファンであり信奉者だったことから、社内では「うかい教の教祖と信者」などと言われていました。

 我々、中小企業診断士もオーナーの夢・アイデア・発想・ビジョンを常識的考えでつぶさないこと、「前例がないから無理ですよ」なんて厳禁です。オーナーのとんでも発想を大事にし、夢を実現する応援団であるべきだと学びました。

 以上、鵜飼社長亡き後、今でも、一ファンとして、また株主として会社を応援しています。
 実は、株主優待が充実していることもありまして(笑)
 「箱根ガラスの森美術館」の入場券・ランチ券が5枚セットになっており、年2回は女房と楽しんでいます。おススメです。
 ただし、自己責任でお願いします。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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